タグ

経営者からセクハラされて辞めました

個人経営のパソコン教室でインストラクターをしていたときの話です。私は正式なインストラクターとしての経験はありませんでしたが、職場では周りの人たちにパソコンの操作方法を教える立場に居たことがありましたし、コールセンターで機械の操作方法の問い合わせに答える仕事をしていたこともあり、人に教える、説明する、という作業は決してマニュアル通りにはいかないことを実感としてわかっていました。

そのため、できれば個人経営の小さなパソコン教室で、自分の裁量にある程度まかせてもらえるようなところがいいと考え、そういう求人を探していたのです。たまたま、その条件にぴったりの求人を見つけ、私はすぐに応募しました。そして教室の経営者である70代男性と面接し、すぐに採用になりました。

ただ、その採用の条件としては、私が経歴としてはインストラクター未経験で、しかもパソコンについての資格を何も持っていなかったことから、その教室でまず一生徒として受講し、指定された資格を取得したところで本採用とする、ということでした。その条件を出された時点で、疑問を感じなかったと言えばうそになります。それでも、経験も資格もなかったことは事実ですし、受講料は半額で受験料は学校側で持つと提案され、さらに指定された3つの資格についても、正直なところ自分のレベルではせいぜい2か月もあればクリアできる内容だったので承諾しました。

しかし、さらに首をかしげる条件を出されました。受講している間は、この教室と試用契約をしていることを他のインストラクターに黙っていること、その上で、通常は教室を休んでいる日曜日にどうしても受講したいという生徒のために2時間だけインストラクターをして欲しい、経営者の自分も授業をアシストするから、というものでした。試用期間であっても、実際にインストラクターとして指導するのであれば、当然給与が発生します。その分については、間違いなく支払ってもらいました。けれど、すでに給与が発生しているのですから、他のインストラクターに黙っている理由がわかりません。確かに資格を取得するまでは、そのインストラクターたちの指導を他の生徒に混じって受けているわけですから、他の生徒の手前私をインストラクターだと知られるのはまずいというのはわかります。けれど、他のインストラクターたちに黙っている必要があるのでしょうか。

やがてそれは、経営者が個人的に、他のインストラクターたちと私があれこれ情報交換されては困ると考えていたからだ、ということがわかりました。

その経営者は、やたらと私を教室内にある自分の私室に招きたがり、また食事にも誘ってきました。自分のアットホームな教室でインストラクターとしてやっていけるか、私の人柄をよく知りたいから、という理由でした。私としては試用期間中ですし、経営者の機嫌を損ねたくないわけですから、とりあえず愛想よく、最低限ですが誘いを受けていました。そしてそのうち、なんだか様子がおかしいと感じ始めたのです。教室内で展示物を掲げるために私が椅子に乗っていると、さっと側に寄ってきた椅子を支えてくれるのはいいのですが、そのついでに私の身体を触ってくるのです。

相手は70歳をすでに超えたお年寄りです。本当に、まさかね……という感じでした。しかし、その経営者の態度はどんどんエスカレートしていき、教室内で私が生徒を指導しているときですら、あからさまに身体に触ってくるようになりました。いえ、恐らく生徒さんの手前、私がはっきり抗議できないだろうと踏んで、講義中に触ってきていたのだと思います。さらには、自分の「健康」のためにもっと触らせろ、とはっきりと口にしてきました。

私は本当に、どう対処すればいいのか頭を抱えました。正直、こっちは二十歳やそこらの小娘じゃないんですから、はねつければ済むことだとわかっています。けれど、インストラクターの仕事自体はとても気に入っていましたので、これのせいで辞めさせられるのもしゃくです。労働基準監督署に訴えることも考えました。それでまず、その教室の他のインストラクターさんに、こっそり相談したのです。実は私はすでに試用契約をしており、日曜日に2コマ授業も持っているとう状況も打ち明けて、です。私の相談を聞いたインストラクターさんが最初に言ったのは、「あのじいさん、またやったの!」でした。つまり、その経営者は私だけでなく、その教室のインストラクターほぼ全員に、同じことをしていたのです。そして当然のことながら全員から手厳しくはねつけられ、以後二度とセクハラはしない、と誓わされていたと言うのです。

私は心底呆れました。これは完全な常習犯だ、こんなヤツに何をどう言っても必ず同じことを繰り返す、セクハラが犯罪だということなど、コイツは死ぬまで理解なんかしない、と。私は、労働基準監督署に訴えると、他のインストラクターさんに言いました。あきらかに百万円単位で慰謝料が請求できる内容だから、と。けれど彼女たちは、そんなことをすれば生徒さんに迷惑がかかる、そのせいで経営が成り立たなくなったら自分たちも仕事を失う、だからそれだけはやめてくれ、と私に懇願しました。そう言われてしまうと、私もそれ以上強く言えませんでした。

結局、他の先輩インストラクターさんたちが結束し、経営者に詰め寄って私に対するセクハラも一切やめるよう約束を取り付けてくれました。経営者の方は、そんなことを言うならこの教室自体をもう止める、自分は別のお金のために経営しているんじゃない、と逆ギレしましたが(これもお前ら仕事を失くしていいのかと暗に言っている明らかなパワハラですが)、先輩インストラクターたちは経営者のそういう態度にも完全に慣れている様子で適当にあしらいました。その後、確かに経営者から私に対するセクハラはやみました。先輩インストラクターさんたちも気を遣ってくれて、私が経営者と2人切りにならないよう、シフトを組むときも工夫してくれていましたし、私もそういう自体は徹底的に回避しました。

それでも、その職場には1年務めたところで、私は辞めました。やはり、前述したとおり、この経営者は根本的にダメだとはっきりわかってしまったからです。セクハラが犯罪だとは、本当に死ぬまで理解しないでしょう。きっとまた、新しいインストラクターを雇い入れては同じことを繰り返しているはずです。1年間、我慢して務めたのは、仕事自体は楽しかったことと、以後仕事を探すとき、最低でも1年は勤務実績がないと経験者だとは申告できないと考えたからです。

現在私は、ご自宅に直接伺って個人的に指導するインストラクターをしています。もちろん、相手の身元に関しては、しっかりした紹介のある方だけでお願いしています。学校に所属してお給料をもらうインストラクターに比べると、実入りは確実に少ないですが、それでも自分の判断で臨機応変に相手の要求にそった指導ができ、自分の裁量で働けることを思えば、いまの働き方で充分だと思っています。